hana sugisaki

静かな熱を帯びた、杉咲花の眼差し〈後編〉

10年以上の芸歴を経ていまや数々の映画やドラマの座長として、その姿を見ない日はない俳優・杉咲花。Valentino (ヴァレンティノ) の美しい仕立てのグレーのセットアップは、日々を咀嚼しながら前へ進む彼女の葛藤と誠実さを表すような佇まいだ。

映画『朽ちないサクラ』では、信じるべきものと貫きたい正義の間で葛藤を重ねる、県警の広報職員・森口泉を演じた。森口を通して見せた杉咲の真摯な眼差しは、たしかな説得力とともに作品に昇華されている。本作への向き合い方、仕事と日常の境界について、対話することについて、いま感じていることを話してくれた。

hana sugisaki

model: hana sugisaki
photography: naoki usuda
styling: saki nakazawa
hair & make up: masako toyoda
interview & text: rei sakai
edit: manaha hosoda

ジャケット ¥665,500、パンツ ¥181,500/VALENTINO (ヴァレンティノ)、シューズ ¥156,200/VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)

―本作は、対話が物語の始まりです。なるべく後悔しないようにと思っても、その瞬間の自分の気持ちもありますし、上手くいかないときもあると思います。杉咲さんは普段から、なるべく対話することを心がけていますか?

昔は言葉にできないことを見て見ぬふりして、衝突が続いてしまうこともありました。ここから先は汲み取ってほしいと相手に求めてしまったり。ですが最近は、特に仕事を通して、自分の考えに変化が生まれてきている部分もある気がします。

―そうなのですね。

フィーリングで積み重ねていけることもありますが、やはりそれだけではない瞬間って絶対に出てきますよね。そこを怠らずに、遠回りになってもいいから自分が思っている感覚を伝えて共有し合うことで、信頼関係が構築されたり、物語が深まっていくという実感を、ここ数年ですごく感じていた気がします。思っていることを言語化できる力を持って身につけていきたいと思いますし、それは日常生活においてもとても大切なことだと感じています。

―対話をする上で、相手の気持ちを考えることはもちろん、そのためにまず自分自身を大切にすることも大事ですね。

そうですね。こういった仕事をしていると特に、褒められることとか自分を受け入れてもらうことに中毒になってしまいがちだと思うので。まずはありのままの自分をちゃんと愛せたらいいなって。そして誰もが、自分と同じ一人一人の人間だという意識を持つこと。自分のことになると、結構ネガティブ思考になってしまうことも多いのですが(笑)。そういうときは一度ネガティブな思考になることを止めようとしないで突き詰めてしまう。そうすると私は、その後一気に楽観的になれます。そういう時間も、自分の中では大事だなと思いますね。

「孤狼の血」シリーズの柚月裕子原作、異色のサスペンスミステリー小説を映画化。愛知県平井市在住の女子大生が、度重なるストーカー被害の末に、神社の長男に殺害された。地元新聞の独占スクープ記事により、警察が女子大生からの被害届の受理を先延ばしにし、その間に慰安旅行に行っていたことが明らかになる。県警広報広聴課の森口泉(杉咲花)は、親友の新聞記者・津村千佳が約束を破って記事にしたと疑い、身の潔白を証明ようとした千佳は、1週間後に変死体で発見される。自分が疑わなければ、千佳は殺されずに済んだのにーー。自責と後悔の念に突き動かされた泉は、自らの手で千佳を殺した犯人を捕まえることを誓う。