Fashion Show Versus Social Media, Buy Now And Wear When And Why Fashion Is Crashing

ファッションショーのあり方が変わる、CFDA がコンシューマーに向けたファッションウィークの新方針を提起

Tamara Mellon 2015年 9月〜11月向けコレクション。 実際の季節に合わせてオンシーズンのシーズンのワードローブ提案を年4回行っている。| www.tamaramellon.com

Fashion Show Versus Social Media, Buy Now And Wear When And Why Fashion Is Crashing
Fashion Show Versus Social Media, Buy Now And Wear When And Why Fashion Is Crashing
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ファッションショーのあり方が変わる、CFDA がコンシューマーに向けたファッションウィークの新方針を提起

Fashion Show Versus Social Media, Buy Now And Wear When And Why Fashion Is Crashing

Council of Fashion Designers of America (米国ファッション協議会、通称 CFDA) は15日、グローバル・マネジメントコンサルティング会社の Boston Consulting Group (ボストン・コンサルティング・グループ) と提携し、今後ニューヨークファッションウィークの方針を刷新する意向を発表した。ファッション業界人にとって長年の悩みであったファッションウィークの開催方法についての議論。要するに、最新コレクションが即座にソーシャルメディアを通じて世界中に拡散されてしまう現代において、6ヶ月というインターバルはどう考えても長すぎる、という旨だ。

Image via cfda.com

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Council of Fashion Designers of America (米国ファッション協議会、通称 CFDA) 15日、グローバル・マネジメントコンサルティング会社の Boston Consulting Group (ボストン・コンサルティング・グループ) と提携し、今後ニューヨークファッションウィークの方針を刷新する意向を発表した。ファッション業界人にとって長年の悩みであったファッションウィークの開催方法についての議論。要するに、最新コレクションが即座にソーシャルメディアを通じて世界中に拡散されてしまう現代において、6ヶ月というインターバルはどう考えても長すぎる、という旨だ。

これらの動向を受けて CFDA が取り決めた新案は、未だ全貌は明かされていないものの、今後デザイナーとリテール、メディア、そして消費者の4者間におけるコミュニケーションをより潤滑にし、ファッションウィークそのものをよりコンシューマー向けのイベントにシフトするという方向性を示している。

日本において言えば既に Tokyo Girls Collection (東京ガールズコレクション) をはじめ、ブランドと消費者がダイレクトに繋がるファッションショーの前例がある。また一方で、この問題に対してそれぞれで取り組みを行っているブランドも少なくない。Céline (セリーヌ) Tom Ford (トム・フォード)Proenza Schouler (プロエンザ・スクーラー)、そして直近ではオルセン姉妹による The Row (ザ・ロウ) など一部のブランドは、ショー発表後のソーシャルメディアを含む全てのメディア露出をコントロールするなどの方策を講じてきた。Jonathan Anderson (ジョナサン・アンダーソン) による Loewe (ロエベ) Jeremy Scott (ジェレミー・スコット) は逆にショーの発表直後より店頭での販売を開始、消費者の意識を途絶えさせないよう新たなアプローチとして注目を集めた。2016年春夏シーズンにおいては、ニューヨークデザイナーの Rebecca Minkoff (レベッカ・ミンコフ) からは、来年2月に開催される2016-17年秋冬ニューヨーク ファッションウィークにて、オン・シーズンにあたる2016年春夏コレクションを発表することが発表されたばかりだ。

これまでロンドンでファッションショーを開催してきた Tom Ford は2016年春夏コレクションにてミュージックビデオ形式のプレゼンテーションを開催。また来季2015-16年秋冬コレクションはニューヨークにてショーを開催することが発表された。

これまでロンドンでファッションショーを開催してきた Tom Ford は2016年春夏コレクションにてミュージックビデオ形式のプレゼンテーションを開催。また来季2015-16年秋冬コレクションはニューヨークにてショーを開催することが発表された。

2/2ページ: プレコレクション、店舗の販売時期、ブランド側の負担など、まだまだ課題は山積み

Tamara Mellon 2015年 9月〜11月向けコレクション。 実際の季節に合わせてオンシーズンのシーズンのワードローブ提案を年4回行っている。| Image via www.tamaramellon.com

Tamara Mellon 2015年 9月〜11月向けコレクション。 実際の季節に合わせてオンシーズンのシーズンのワードローブ提案を年4回行っている。| Image via www.tamaramellon.com

このことは同時に、”Buy Now Wear Now (今買ったものを今着る)” に代表されるファッション業界のフローそのものに対する問題提起することになる。2013年頃より度々議論の的となってきた、店舗での展開シーズンと実際の気候との差異。現状のサイクルでは、年始の凍えるような寒さの中、店頭では薄手の春夏の洋服が並べられることになる。既存のシステムに疑問を持つデザイナーも少なくなく、2013年には元 Jimmy Choo (ジミー・チュー) のスポークスマンパーソンである Tamara Mellon (タマラ・メロン) によるウィメンズウェアブランドは “Buy Now Wear Now (今買ったものを今着る)” というコンセプトのもと、それぞれの気候に合ったワードローブを、オンタイムで販売。元 Emmanuel Ungaro (エマニュエル・ウンガロ) のクリエイティブ・ディレクターである Esteban Cortazar (エステバン・コルタザール) も同様のアプローチで2013年にカプセルコレクションを発表している。

ファッションショーの発表方法、実際の店頭での展開時期、問題はそれだけかと思いきや、実情は想像を遥かに超えて複雑だ。まずそもそも年に2回のファッションウィーク、という概念は既に古い。2000年代中盤からビッグメゾンを中心に少しずつ取り入れられてきたプレコレクションは、今やほとんどのデザイナーにとってスタンダードになっている。プレコレクションの意義としては、気候の変動に適合するため、新興経済国へのアプローチ、そしてソーシャルメディア時代の情報サイクルに合わせたハイ・スピード型クリエイションなど様々な要因が挙げられる。それぞれの立ち位置を分析すると、ブランドによって多少の差異はあるが以下のように区分される。

・プレスプリング、クルーズ、リゾートコレクション  5月頃発表、店頭での展開は年末
・春夏コレクション 910月に発表、店頭での展開は12
・プレフォールコレクション 12月頃発表、店頭での展開は3月頃
・秋冬コレクション 23月に発表、店頭での展開は78月頃

単純計算でコレクションの回数を増やすことにより、飽きっぽい消費者に対しても常に新しいコレクションを提案。従来のシーズンのインターバルを埋めることにより気候にも柔軟に対応出来るなど、様々な面で有用性が認められているプレコレクション。しかしコレクションの数が増えると何が起こるかと言えば、言うまでもなくブランド側への負荷がかかり過ぎるということだ。今年に入ってからいくつかのメゾンでデザイナーの辞任が報じられた。それを受けて『Vogue (ヴォーグ)』のインターナショナル・エディターの Suzy Menkez (スージー・メンケス) は「Why fashion is crashing (倒壊しゆくファッション)」と題したコラムを執筆。文末では有名メゾンのことを猛獣の檻と揶揄し、現代のファッション業界が抱える多くの闇について綴っている。

これだけ多くの問題が挙げられる中で、ファッション業界の誰もが頭を抱え、改善の策を模索している。そんな中で発表された CFDA による新コンセプトは、ファッションウィーク規模で方向転換を図るという点において大きな意義がある。そして今回の発表が今後ファッションウィーク、そしてファッション業界全体のしくみをも変えさせるターニングポイントとなる可能性もある。新案が吉と出るか凶と出るか。いずれにせよ、ショーは続けなければいけないのだから。