sacai
spring summer 2021 collection

雨ニモマケズ。「らしさ」を貫くタフネス、サカイ 2021年春夏コレクション

©sacai

sacai spring summer 2021 collection
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雨ニモマケズ。「らしさ」を貫くタフネス、サカイ 2021年春夏コレクション

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sacai (サカイ) の2020年春夏コレクションが神奈川県小田原市の江之浦測候所で10月7日に発表された。現代美術家である杉本博司が設計した文化的にも非常に価値のある同施設の庭園を活かし、ランドスケープとコレクションが見事な融合を果たしたランウェイショーとなった。

ショー当日は生憎の雨ながら、新型コロナウィルス感染予防のため設置されたクリアボックスが幸運にも雨よけに。雨風が吹きすさぶ中、ランウェイを勇ましく闊歩するモデルたちの姿がドラマティックにライトアップされていた。

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女性らしさと力強さ、sacai (サカイ) の服には常にこのふたつが共生している。風をはらむ度に揺れ動き、違う表情を覗かせるプリーツやドレープは、雨をうけても依然とセンシュアル。デイリーに着れるデザインながら、異素材をハイブリッドした一癖も二癖もある服たちは、着る人のアティチュードを強調する。「sacai らしさ」を今シーズンも突き詰めながら、トレンド感を失わず現代女性の多様なライフスタイルにフィットするコレクションだ。

ファーストルックは、フォーマルなウィングカラーのシルクシャツに胸元からひろがるシースルースカートの組み合わせ。胸元の切り替え部にバンドゥーの要素としてセットされたベルトが新鮮だ。ベルトから伸びるチェーンは、アクセサリーとなって多くのルックに取り入れられ、コレクションにさりげなくも主張を加えている。

コレクションは、sacai らしいハイブリットなスタイルを中心に進行。デニムやトレンチコートをドッキングさせたジャケット、シャツをつなぎ合わせたようなドレス、テーラードジャケットやMA-1を再構築したスカートなどいくつもの要素がかけあわされ、立体的なフォルムを描いていく。リラックスしたオーバーサイズのシルエットながらも、透け感やスリット、潔い肌見せで女性らしさは忘れない。コレクションを見ているだけで、組み合わせの可能性が無限に浮かぶ。そんなファッションの醍醐味をいつも sacai は思い出せてくれる。

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印象的だったのは、R&B界に衝撃を与え、今もなお多くのアーティストに影響を与える Sade (シャーデー) のベスト盤『The Best of Sade』のアートワークを主役にしたルック。カジュアルなTシャツながらも、フリンジのスカートと sacai が現代のユーティリティファブリケーションとするMA-1を再構築したブーツをあわせることで、ひと際インパクトのあるルックに。もはや神格化の域に達しているほど熱狂的な支持を得るレジェンダリーシンガーの Sade Adu (シャーデー・アデュー) が持つ女性らしさや強さ、柔らかながら魅惑的なパワーからインスピレーションを得たという本コレクションは、Sade の代表曲のひとつ「Kiss of Life」でフィナーレへ。雨をも自然の恵みと賛美するようなポジティブなムードに包まれてショーは幕を閉じた。

新型コロナウィルスや天候トラブルをものともせずに、雨さえも演出の一部だったかのような堂々たる貫禄を見せつけた sacai。そこに垣間見えるデザイナー阿部千登勢の柔軟さとタフネスに、改めて拍手を送りたい。